明治三十三年、中川安五郎の手によって掲げられた文明堂の看板。以来、明治・大正・昭和・平成そして令和。刻々と色を変えていく時代の中で私達が目指してきたもの。それはいつの時も「皆様に喜んでいただけるお菓子づくり」この一点でした。大正三年(1914年)長崎県の推薦を受け、「大正大博覧会」にカステラを出品。好評を得て名実ともに文明堂が世間に知れ渡ることとなりました。
「長崎にカステラあり」と言わしめた自慢のカステラ。そのカステラに使われる材料にもまた、特別な想いがあります。厳しい目で材料を吟味し製法の研究・改良を積み重ねながら常に品質向上のために努力を惜しまない。それは創業当時から受け継がれてきた揺るがない伝統であり、歴史です。ここではそんなカステラに使用しているこだわりの材料をご紹介します。
創業者 中川 安五郎
カステラ専用卵「南蛮卵」
豊かな味や香り、新鮮な卵ならではのコク、そして黄金色とも言われるカステラ本来の色と艶。
文明堂総本店では契約農場と一から開発したカステラ専用の卵を使用しています。長崎県と佐賀県の県境に位置する多良岳山系。日本三百名山の一つとして数えられ標高1000m前後の山が連なる恵まれた自然の中で南蛮卵は作られます。茶畑に囲まれた高台で、平地と比べ気温は低く空気は澄んでおり鶏の飼育に適した環境です。
そしてもう一つ、大きなポイントとなったのは飼料の配合です。カステラに一番適した卵にするには何を与えればいいのか。数ある飼料の中で注目をしたのが牧草とコーンでした。牧草は栄養価が高く鶏が健康に育ちます。また数種類の高品質なコーンをブレンドすることで卵により深い味わいをもたらします。改善点を見つけは配合を見直す。この途方もない作業を繰り返し納得のいく理想の卵へと長い年月をかけて近づけていきました。こうしてカステラ作りへの思いを込めたカステラ専用の卵は誕生しました。この卵をカステラのルーツでもある「南蛮」に思いを馳せ「南蛮卵」と名付けました。
※鶏卵の供給状況により同等級の卵をブレンドする場合がございます。
チョコレートカステラ及び抹茶カステラには南蛮卵を使用しておりません。
国内産の小麦粉
一般的な小麦粉に比べ粒度が細かく、グルテン形成が少ない小麦粉を使用しております。泡立てたきめの細かい気泡により、口どけがよくしっとりとしたカステラに焼き上がります。また製粉したのち熟成をさせることで生地がしっかりと膨らみ、ふんわりとした独特の弾力が生まれます。100%国内産の良質な小麦粉により文明堂総本店のカステラは作られています。
ざらめ糖
長崎カステラの特徴は、なんと言っても底にざらめ糖が残っている事。ざらめ糖の語源は粒が「粗め」からきており、底に残ったざらめ糖のシャリっとした食感がアクセントとなります。ざらめ糖は精製糖の中でも純度が高くカステラに適した上品な甘さを生み出します。
もち米水飴
文明堂総本店のカステラの大きな特徴の一つがもち米の水飴を使用していることです。一般的に知られている無色透明の水飴は、ジャガイモやトウモロコシなどのでんぷんで作られ、水飴そのものに香りはありません。一方もち米水飴は薄い褐色をしており独特の風味が特徴です。九州産の厳選したもち米や麦芽を使用し昔ながらの製法で時間をかけて作られています。もち米に含まれるアミノ酸により滋味のあるふくよかなうま味がカステラに絶妙な味わいをもたらします。